酒粕とは日本酒の製造過程で生まれる副産物を指します。日本酒を造る際に、発酵したもろみから日本酒を搾って、その際に残った固形物が酒粕です。
酒粕の原料と成分
酒粕は日本酒の製造過程で生まれるもので、日本酒の原料である米と米麹が発酵したものです。酒粕にはたんぱく質・食物繊維・ペプチド・アミノ酸・ビタミンなど、米由来成分や麹菌・酵母が生産した代謝産物に富み、栄養価が高いと言われています。
豊富な栄養素の他、製造過程で微生物達が産みだした100種類以上の酵素も含まれます。日本酒を搾る際の副産物ということで、アルコール分も残っているのが特徴です。
酒粕の製造工程
酒粕は発酵したもろみを搾ることによって生み出されます。酒粕をより深く理解するため、まずはもろみがどんなものか説明します。
酒粕の元となる「もろみ」とは
酒粕の元になる「もろみ」は、原料の米・米麹・水がアルコール発酵したもので、ドロドロと白濁した液体です。このもろみを搾ることで、日本酒と酒粕に分かれ、そこで初めて酒粕が生まれます。
酒粕はもろみを搾る工程でできる
酒造りの中で、発酵が終わったもろみを搾り日本酒と酒粕に分ける工程を、「上槽」と呼びます。
上槽は、圧搾機で圧力をかけてもろみを搾る方法が主流ですが、「袋吊り」といって袋にもろみを入れて吊るし、圧力をかけず重力のみで搾り出す方法もあります。その他、遠心分離や氷結取りといった、さまざまな上槽方法があります。
圧搾機から手作業で取り出す
圧搾機を使った上槽の場合、機械に残った酒粕は手作業ではがされます。この際に集められた酒粕は、その総量を計量してお酒の量と酒粕量の割合を導き出します。この割合は、次期の酒造りの参考となる、重要なデータとなります。
酒粕の種類
酒粕は、加工された形などによって、いくつかに分類されます。ここでは、酒粕の種類について紹介します。
酒粕の味わいはさまざま
「吟醸酒粕」や「純米酒粕」として市場に出回っているものを見かける機会が多いと思いますが、「本醸造粕」もあれば「大吟醸酒粕」もあります。要するに、酒粕は日本酒の種類の数だけ存在するということです。原料や造り方の違いによって、酒粕の風味も変わってきます。
酒粕の形状による分類
酒粕は、販売される形状によって、いくつかに分類されます。
- 板粕
平たい板状の酒粕で、もろみを搾る際に板状となって残った酒粕そのままを商品にしたものです。溶けにくいため水に漬ける時間を長くしたり、使う前に溶かしてペースト状にして使うのが一般的です。好きな大きさに切って、そのまま焼いて楽しめるのは板粕ならではの楽しみ方です。
- バラ粕
板粕としてとれずに、バラバラに崩れた状態の酒粕。細かく砕かれているため板粕よりやわらかく、使いやすいという利点があります。
- 練り粕
板粕やバラ粕を練って、やわらかいペースト状に加工したもの。なめらかで溶けやすく、調味料にも用いられる他、野菜や魚を漬け込むのもおすすめです。
酒粕を食べるメリット
文部科学省が作成した食品組成データベース(第8版)を確認すると、調味料・香辛料カテゴリに分類されます。
副産物であり、このように分類されているため、栄養があまり残っていないと考える人もいるかもしれませんが、豊富な栄養素があります。 ただ調味料の一つと呼ぶのではなく、”完璧な栄養発酵食品”と呼びたいと思います。
日本酒は主に米と水(麹菌と酵母)から作られていますが、100gの酒粕の栄養価を白米と同等のサービングと比較すると、違いは明らかです。
白米に比べて、酒粕は:
- 蛋白質の6倍高い
- 食物繊維が17倍
- ビタミンB2の26倍高い
- ビタミンB6の47倍
健康上の利点も数多くあり、科学的研究では酒粕が効果的であることが示されています:
- コレステロールの上昇を抑える
- 血圧を下げる
- 記憶喪失の予防/記憶喪失の改善
- 肝障害の抑制
- 豊富な耐性タンパク質と発酵酵素のおかげで、肥満の予防と代謝の改善にもプラスの効果があります。
酒粕の用途
酒粕は、おいしい食べ物やお菓子の両方で、さまざまな方法で使用することができます。:
- 甘酒(冬は温かいうちに飲む甘い低アルコール飲料)
- スープと鍋
- マリネード
- 酸洗
- パンや焼き菓子
- アイスクリームまたはジェラート
酒粕は酒造りの副産物として自然に6~8%程度のアルコールが含まれているので、アルコールを飲みたくない、または子供に与える場合は、よく調理してアルコール分を取り除くように注意する必要があります。
食品とは別に、美容や化粧品によく使われます。 肌を美しくすることで知られるビタミンB2が豊富で、自分で作ることもできます。 また、動物の飼料穀物、農業の肥料、焼酎やジンを作るための原料としても使用されています。
ご覧のとおり、酒粕には多くのメリットがありますので、機会があればぜひ酒粕を使ってみてください。