日本人にとって日本酒には大きく3つの意味があります。1つ目は、神へ捧げるため。2つ目は、人々をもてなすため。3つ目は、薬や滋養強壮のためです。
今回は、日本酒と神の繋がりについて紹介いたします。日本人の日本酒との関わりを知ることで、今までと日本酒の見方が変わるかもしれません。
日本における儀礼とは
日本における儀礼は、人生における特別な年齢を通過したタイミングや、農作物等の収穫への感謝や豊作を願ったり、安全祈願を行うものがあります。どれも神に感謝と祈りを捧げることが儀礼内で行われます。
人生における通過儀礼
ライフステージにあわせた儀礼には、結婚式などの祝福の行事のほか、年齢の変化に区切りをつけて祝ったり、災難を避けるために祈ったりする行事があります。
年齢の区切りを祝うものとしては、還暦(かんれき)のような行事があります。還暦の名称は、日本独自の方式で数える干支(えと)という暦が60年でちょうど1周し「暦が還る」ことに由来しています。昔は60歳まで生きると十分長寿だったことから、長生きを祝う行事です。
災難を避ける行事としては、厄年(やくどし)があります。厄年は、体の成長や家族構成などに大きな変化が起きやすい年齢のころ、厄(やく)と呼ばれる災難を振り払うための祈りを捧げる行事です。男性と女性で少しずつ対象となる年齢が違い、生涯に4~5回ほどあります。
地域における季節の行事・祭礼
日本は、農耕を中心に漁業や山の狩猟で食事を確保してきまたため、海・山のさまざまな自然の産物にそれぞれ神が宿っていると考えてきました。
特に、主食とする米を育てる稲作は収穫までにとても手間がかかり、便利な機械がない時代は、地域の人員が総出で作業しなければなりませんでした。このため、地域の人が結集して気持ちをあわせるために、神へ季節ごとに感謝と祈りを捧げるとともに、楽しんでいただくためのお祭りを行うようになってきました。
儀礼の必需品としての日本酒
儀式のときに日本酒は下記の2つの理由から用いられるようになりました。
神聖なもの
稲は、古代神話に登場する最も重要な神から授かった神聖な植物とされ、この稲の実である米を発酵してつくられる日本酒は、神様へ捧げる特別な飲み物とされてきました。
土地の神様への感謝の供物
また日本では、古来からその土地で収穫できる最高のものを神への感謝として捧げてきました。神から授かった神聖な植物とされる稲の実を磨いてつくる米は、このなかで最も重要な供げ物とされました。
そのなかでも、様々な手間をかけてつくられる日本酒は、最も尊い献上物で、祭礼に欠かせない供物とされるようになりました。
儀礼としての日本酒の用い方
神へ捧げる供物は「御神饌(ごしんせん)」ともいわれ、神社や祭の方法により多少の違いはあるものの、主に供えられるのは、米、酒、塩、魚、野菜、果物です。これは神からの恵みでいのちをつなぐことが出来たことを感謝する意味と、今後も同じように恵が与えられるように祈る意味とがあります。
神に供える食事には感謝を捧げると同時に、神をもてなすごちそうの意味もあります。また、お供えしたものを食べることで、神と人とが共に飲食することで神様とコミュニケーションをとるという大切な儀礼でもあります。
まとめ
日本酒は神への感謝と祈りを行うときに用いられてきました。日本酒を用いる儀礼は、新しい年を迎えるタイミングや、長寿を祝う時、収穫を喜ぶ時に行われてきました。こういった儀礼では神様とコミュニケーションを取る重要な場とされ、さらにその場に参加している全員の結束を固ることが行われていきました。日本人にとって日本酒は他のアルコールドリンクと異なり、神聖な意味があるのです。
【参考URL】
アジアの伝統酒研究の展開 ~ 日本における研究を中心に
月桂冠 ~ 乾杯の文化 酒盃のやりとりを通して生まれてきた独自の習わし
たのしいお酒.jp ~ 清酒と日本酒の違いを解説!知っておきたい清酒のおいしい飲み方
こよみの神宮館 ~ 御神酒の基本
菊水酒造 ~ 第5回 酒の神を訪ねて〜御神酒のあがらぬ神はなし〜
OSOT web ~ vol.18 受け継がれていることをまず知ることから